国家資格は、その分野の専門知識や技術を有することを証明する公的な資格です。資格取得には一定の難易度がありますが、取りやすい資格もあります。
国家資格を取得することは、自己啓発やスキルアップにつながるだけでなく、就職や転職において有利に働くことがあります。しかし、取得には時間や労力が必要なため、事前の情報収集や勉強計画の立て方が重要です。
本記事では、国家資格の中でも取りやすい資格とその難易度について解説します。

国家資格とは?

国家資格とは、特定の職業や業務を行うために必要な能力や資格を国が定め、試験などを通じて合格者に認定する制度です。
国家資格を取得することで、その職種や業務に必要な知識や技能、適性を保証でき、社会的信頼性が高いとされています。
また、その職種に就くことができるだけでなく、資格手当や職務給与のアップなどのメリットもあります。
取りやすい国家資格の条件
国家資格の定義についてご理解いただけたかと思います。国家資格の取得は難しいと思う方も多いのではないでしょうか?
資格のなかには取りやすい国家資格もあります。そこで本章では、取りやすい国家資格の条件について紹介します。
- 独学で取得可能
- 勉強のしやすさ
- 受験の頻度
これら3つの条件は、資格取得に向けた勉強期間に入る前に必ず把握しておくべき内容となります。
独学で取得可能
独学で取得できる資格試験の内容は、基本的な知識や技能を問うもので、教科書や問題集が豊富に出回っている場合がほとんどです。
ただし、独学で取得するためには、ある程度の学習能力や継続力が求められます。
また、試験に合格するためには、過去問題集などで実践的な問題演習を行い、自分自身の理解度を確認することも重要です。
勉強のしやすさ
国家資格の中には、試験内容が比較的易しいものもあります。
例えば、簿記や秘書検定は、基本的な知識や技能を問うもので、難易度が高くないとされています。
また、介護福祉士なども、社会福祉士などに比べると、比較的易しいとされています。
難易度の低い試験は、取得までに長期間の勉強や実務経験が必要なものもありますが、比較的取得までの期間が短いのが特徴的です。
受験の頻度
受験の頻度が高いということは、試験を受ける機会が多く、合格までの期間を短くできるため、取得しやすいといわれています。
例えば、日本漢字能力検定協会主催の「漢字検定」は、年に2回の試験が開催されており、上級者コースでも1年に最大4回受験が可能です。
1度受験に失敗しても、次の受験計画をすぐに立てることができるので、効率的です。
国家資格のメリット

国家資格を取得するメリットについて紹介します。
- 更新不要
- キャリアアップ
- 社会的信用
これら3つの要素を資格勉強開始の段階で明確化しておくことで、勉強のモチベーション維持につながります。詳細を解説していきます。
更新不要
「更新不要」というメリットは、国家資格を取得した人にとって非常に大きなメリットとなります。
特に、更新に時間や費用がかかる国家資格であれば、更新の必要がないことで、その分負担が軽減されます。
また、更新不要であることで、資格取得後もその資格を持ち続けることが可能です。これにより、その資格が求められる業務や職種に就くことができ、就職や転職の際に有利になることがあります。
キャリアアップ
国家資格を取得することにより、その分野での知識・技能を証明できます。
そのため、就職や転職活動において、他の応募者と比較して有利な立場に立てることがあります。また、企業内での昇進や待遇面での優遇も期待できます。
また、国家資格の取得には、高い専門知識や技術力が要求されるため、自己啓発やキャリアアップにつながることが期待できます。
取得に向けた学習や試験対策に取り組むことで、自己成長や自己管理能力の向上にもつながるでしょう。
<h3>社会的信用</h3>
国家資格を取得することで、一般的にその分野での信用度が高くなり、社会的地位を向上させることができます。
例えば、医師や弁護士、公認会計士、宅地建物取引士、司法書士などの国家資格を持っている人は、その資格を持つことによって、その分野での信頼度が高まります。
また、その分野での業務を行う際に、取得した資格に応じた職務を担当できることもあり、職場での評価が高まることが期待できます。
難易度易しめの国家資格3選
まずは難易度易しめの国家資格を紹介します。
- ITパスポート
- ファイナンシャルプランナー3級
- 宅地建物取引士
これら資格は、取得難易度が易しいことに加え、キャリアアップにつながったり、社会的信用・認知の高い資格ですので、コストパフォーマンスの優れた資格といえます。
<h3>ITパスポート</h3>
ITパスポートは、情報処理技術者試験のうち、基礎レベルの資格です。
この資格は、日本の情報処理技術者試験制度において、情報処理の基礎的な知識や技術を持った人材を認定するために設けられています。
ITパスポートの試験は、筆記試験のみで構成されています。試験時間は1時間30分で、70問の多肢選択式問題が出題されます。
試験の内容は、コンピュータの基礎知識、ネットワーク、ソフトウェア、ハードウェア、セキュリティ、データベース、プログラミングの基礎など、広範囲にわたります。
ITパスポートは、情報処理技術者試験のうち、最も基礎的な資格です。
情報処理技術についての基本的な知識を持った人材の認定や、就職や転職の際のスキルアップのためにも役立つ資格とされています。
ファイナンシャルプランナー3級
「ファイナンシャルプランナー3級」とは、日本において、個人のライフスタイルや将来の計画を考慮に入れた総合的な資産管理能力を持った人材を認定するための国家資格です。
ファイナンシャルプランナー3級の受験資格は、特にありませんが、受験者は18歳以上であることが必要です。
試験は、筆記試験のみで構成されており、主に選択式の問題が出題されます。試験時間は2時間30分で、試験科目は「財務・税務」「保険・不動産」「年金・相続」「投資・資産運用」の4科目があります。
この資格を取得することで、ライフプランや資産管理など、個人の資産形成に関する知識やスキルを持った人材として、金融・保険業界などでの就職や転職に有利な資格とされています。
宅地建物取引士
「宅地建物取引士」とは、日本において、不動産の売買・賃貸借・仲介などの業務に従事するために必要な知識や技能を持った人材を認定する国家資格です。
宅地建物取引士の受験資格は、18歳以上で、高等学校卒業以上の学歴を持ち、かつ宅地建物取引業に従事することを希望する者が対象となります。
試験は、筆記試験と口述試験で構成されており、試験時間はそれぞれ3時間です。
この資格を取得するためには、不動産に関する基礎知識や法律、契約書の作成方法、物件査定方法など、様々な分野の知識を学習する必要があります。
また、不動産仲介業務に必要なマナーやコミュニケーション能力も評価されます。
難易度が標準の国家資格3選

続いて、難易度標準の代表的な国家資格を紹介します。
- 社労士
- 中小企業診断士
- 行政書士
これら資格を保持することで、独立開業することが可能です。1つ1つ資格の詳細を解説します。
社労士
社労士は、企業や個人事業主などが行う社会保険や労働保険の手続きや労務管理に関するアドバイスや支援を行う専門家の資格です。
この資格で担う業務は、労働法や社会保険制度、年金制度などの知識を持ち、労務管理に関するアドバイスや労務手続きの代行、法的手続きのサポートなどを行います。
また、企業や個人事業主にとって必要な書類の作成や、就業規則の策定、人事評価制度の構築、給与計算の支援なども行います。
社労士の取得には、専門学校や大学などでの教育を受ける方法や、社労士試験に合格する方法があります。
社労士試験は、毎年6月と11月に実施され、法律、社会保険、労働法規などに関する問題が出題されます。試験に合格すると、社会保険労務士として登録され、実務に従事することができます。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営に関するコンサルティングや支援を行うための国家資格です。
この資格で担う業務は、中小企業の経営改善や事業計画の策定、財務・経理・人事などの経営課題の解決を支援することが求められます。
具体的には、中小企業の現状把握や課題分析、改善策の提案や実施支援、経営計画や事業再生計画の作成などを行います。
中小企業診断士の取得には、中小企業診断士試験に合格することが必要です。試験は、法律、経営学、会計学、情報処理などの科目から出題されます。
また、中小企業診断士制度は、取得後も定期的に研修を受講することで更新する必要があります。
行政書士
行政書士は、国や自治体が定めた手続きや書類の作成や提出、法律や条例の知識が必要な業務を行います。
たとえば、住民票の謄本や戸籍謄本の取得、不動産登記や相続手続き、法人設立や経営に必要な書類の作成、契約書の作成や解釈、訴訟手続きの補佐などが挙げられます。
この資格を活用することで、独立して開業することもできますが、法人や民間企業、自治体、法律事務所などに勤務することもできます。
行政書士になるためには、行政書士試験に合格する必要があります。試験は、行政法、民法、商法、会社法、刑法、訴訟法、不動産登記法、相続法、行政手続法、民事訴訟法などの法律科目から出題されます。
難易度の高い国家資格3選

最後に難易度の高い代表的な国家資格を紹介します。
- 公認会計士
- 医師
- 弁護士
これらの資格は日本の三大国家資格と呼ばれています。社会的地位の高さはもちろん、収入面や将来性も可能性が広がっています。各資格の詳細を解説します。
公認会計士
公認会計士は、企業や個人などが行う会計に関する監査や税務申告などの業務を行うことができる資格です。
主な業務は、企業の決算書などの財務諸表を監査し、会計の適正性や信頼性を検証することです。
また、税務申告や税務調査の代理人として、税務処理に関するアドバイスや支援も行います。
その他にも、経営コンサルティングや資金調達の支援、財務分析、M&Aや企業再生など、多岐に渡る業務に携わることがあります。
公認会計士は、企業や個人に対して高度な専門性を要求されるため、高度な知識やスキルを身につける必要があります。
公認会計士試験に合格することが必要とされますが、その合格率は非常に低く、平均して1割程度となっています。
試験科目は、会計、財務諸表、法人税法、所得税法、相続税法、消費税法、監査、内部統制、財務管理など幅広い分野から出題されます。
医師
医師免許は、医療行為を行う権利を有する免許です。
医師免許を取得するには、医学部での6年間の学士課程修了後、医師国家試験に合格する必要があります。
試験は、医学や臨床医学、医療法などの分野から出題されます。
医師免許を持つ者は、診断、治療、手術、薬の処方などの医療行為を行うことできます。また、緊急時には救急医療にも対応可能です。
医師は、医療行為を行うために高度な知識や技術を身につけ、患者の健康を守ることが求められます。そのため、常に最新の医療情報や技術を習得することが重要です。
また、医療現場ではチーム医療が求められるため、他の医療関係者とのコミュニケーション能力や協調性も必要となります。
弁護士
弁護士は、法律に関する国家資格の一つであり、法律的な助言や代理業務などを行う資格者です。
弁護士になるためには、司法試験に合格する必要があります。司法試験は、法律をはじめとする幅広い知識や応用力を求められる国家試験であり、難易度が非常に高く合格率も低いことで知られています。
合格後は、弁護士会に登録し、弁護士としての業務を行うことができます。
弁護士の業務内容は、法的な問題解決に関する助言や代理業務などがあります。
具体的には、民事訴訟や刑事訴訟、企業法務や不動産取引、相続や離婚などの法的なトラブルに関するアドバイスや、裁判や調停などでの代理人としての活動などが挙げられます。
また、弁護士は、法律の専門家として、法案の立案や法律改正に関する提言なども行うことがあります。
資格取得のためのおすすめ勉強法

国家資格の合格には、受験料や参考書の購入代などの経済的コストや学習時間をはじめとする時間的コストがかかります。
可能な限り、1回の受験で合格できるよう、受験当日まで、効率よく時間を使いたいものです。
本章では、おすすめの勉強法についていくつか紹介します。
- 通信講座
- スクール受講
- 過去問題集の活用
これらの勉強法のメリットを解説しますので、自分の性格や特性に合わせた勉強法を選びましょう。
通信講座
通信講座は、自分のペースで学習ができるため、自分に合ったペースで進めることが可能です。また、忙しい人でも空いた時間を活用して学習できるため、勉強が捗ります。
そして、通信講座の最大のメリットは、通常の学校や予備校に比べて、受講料が安く済むことです。
また、交通費や宿泊費なども必要なく、自宅で勉強できるため、総合的なコストも削減することができます。
スクール受講
お金に余裕のある方は、スクール受講もおすすめの勉強法の一つです。
国家資格の勉強は、一人で黙々とやっていくことが多いため、孤独感やモチベーションの低下が起こることがあります。
そのため、同じ資格を目指す仲間と一緒に勉強することで、励まし合ったり、お互いの理解度を確認したりすることができます。
また、グループでの勉強は、自分が抜け落ちているところを指摘してもらえたり、新たな発見があります。
過去問題集の活用
国家資格の試験では、過去に出題された問題が多く使われることがあります。
そのため、過去問題集を活用することで、実際の試験に近い形式の問題に慣れることができます。
また、問題集を解くことで自分の理解度の把握につながり、試験合格の実力が身についているかどうかの参考となります。
【まとめ】キャリアのゴールから逆算した選択を!

いかがでしたでしょうか?
本記事では、取りやすい国家資格の難易度別に紹介しました。国家資格を取得することで、得られるメリットは複数あります。
しかしながら、国家資格の中には、取得の難しい資格があります。何度も資格試験に失敗し、時間を浪費してしまうことは避けたいものです。
また資格を持つことよりも実務経験や実績が重視される場合もあります。国家資格取得の優先度やキャリアのゴールを十分に考慮したうえで、最適な選択をしましょう。
そのなかの一つに「国家資格」という選択肢があるのです。本記事が1人でも多くの方に参考となれば幸いです。